【移住×コワーキング】人と人とのつながりが、先。
森のオフィス代表・津田賀央さん

縁もゆかりもない富士見町で、10年。
いちばん大事にしていたこと。

この記事でわかること

・縁もゆかりもなかった富士見町に住むことになったきっかけ
・「ここにいれば仕事がもらえる」ではない、つながりのリアル
・御柱や区の出払いから見えた、「本当の移住」
・50代・60代・70代も、ここは自分の場所であること

津田さんの一言

「心理的安全性が確保できる場所を提供すること。そこがあれば、その次に仕事があるとなお良い」

津田賀央さん|経歴
津田 賀央(つだ・よしお)
Route Design合同会社 代表/富士見 森のオフィス 運営代表。横浜出身。
2001年から東急エージェンシー、2011年末にソニーへ。
30代半ば、リンダ・グラットン『ワーク・シフト』(日本語版2012年刊)を読み、住む場所と働く場所が切り離されるなら山で暮らそうと動きます。
2015年5月、富士見町へ移住。同年Route Designを設立し、12月に森のオフィスを役場と開設。
当初はソニーへ火・水・木だけ出社する二拠点を約3年。2023年4月、横浜に「PILE -A collaborative studio-」も開いています。
10周年の本『十草十載』
『十草十載(じっそうじっさい)』(2025年12月26日、96頁、税込2,200円)。
人と人の関係を「生態系」、土台を「土壌」と呼ぶ本です。制作も、ここに集う人たちとの共同作業。
購入:店頭、公式EC(https://morinooffice.thebase.in)、富士見町のgrow thick(グローシック)。ドロップイン券付きセットあり。

Q1. なぜ、縁もゆかりもない富士見町だったのですか?

実家は横浜です。きっかけは「山のほうへ」という漠然とした思い。
大きな会社の歯車になっている感覚と、
10年後に自分の力がどれだけ残っているかという不安がありました。

そんなとき、書籍『ワーク・シフト』(リンダ・グラットン著)を読み、
山に住みながら都市とつながって働くスタイルが来るなら、
好きな山で子育てをしようと考えたんです。

最初に訪れたのは隣の原村でした。
帰り道、エコーラインからの景色があまりにきれいで、
「富士見ってめちゃくちゃいいな」
そう思ったのが2013年末から2014年の頭。
当時は周りの半分にも理解されなかったそうです。
家を決める前に、役場のホームページで「富士見町テレワークタウン計画」を見つけ、
30分後にはメールを送っていました。

「この企画書を書き直させてもらえませんか」

2週間後、役場の担当者が東京まで来てくれて、
家も土地も未定のまま関わることになります。

一軒家でリモートワークをするだけでは友達ができない。
コワーキングスペースがあれば人と人がつながるはず——そう提案しました。

前々町長の小林一彦さんに会ったとき、開口一番こう言われました。
「君、いつから暮らすの?」
その出会いから10ヶ月後には、家族で引っ越していました。

Q2. 最初は、誰もいなかった?

オープン前から反対の声もあったそうです。
立ち上げは津田さんと地域おこし協力隊3人。
初年度はおおよそ20〜30人が集まりました。
大半は外から来たフリーランス(映像・デザイン・写真など)で、年代は30代から40代後半。

宣伝予算はほとんどなく、手弁当とFacebookが頼りでした。
ソニーと半分働く津田さん自身が取材され、それをきっかけに人が来るように。
大事にしていたのは仕事場そのものより「会話」です。
「ここに来たら、どこから来たんですか、から始まる。
歓迎会も開く。
人と人がつながる面白い場所になりそうだ、と感じてくれた人が居座ってくれた」

見学して、街を知って、家を借りて——そうして移住する人が徐々に増えていきました。

Q3. ここに来れば、仕事はもらえますか?

「ここにいれば仕事がもらえる、というのは違う。

自立して専門を持っている人が、オープンであることで仕事につながることもある。
仕事じゃなくても、暮らすためのつながりは手に入る」

最初は人とのつながりも少なかったのですが、
いまでは色々なつながりもでき、運営を始めてから4〜5年で、
日々届く相談にも1〜2打で返せるくらいになってきました。

その先にあるのは、子ども同士が仲良くなる、
近所に行ける、困ったら助けてもらえるということ。

森のオフィスのオープン1年後には木・土曜に「なんでもお仕事相談」を開始しました。
農家のサイト、デザイナー紹介、石鹸のブランド立ち上げも、同じつながりの延長線上にあります。
地元の人も移住者も混ざっているのが特徴です。

いまでは数えられる範囲で、森のオフィスから生まれた取り組みは大小約200以上。
「心理的安全性が先。仕事は、その次にあるとなお良い」


テイクより先にギブできる精神で来てもらわないと、生活は難しい。

ここが一番大事だ。

Q4. つながりから、何が生まれましたか?

「僕が過去に開催したワークショップの中に『ignite!』というプロジェクト創出ワークショップがあります。

1年がかりのワークショップで、過去3回開催されました。

ここでは、アイデアはあるけど仲間がいない人や、アイデアはないけど何か手伝いたいと
考えている人が参加し、ワークショップ参加者の中で出たアイデアの元にプロジェクトチームを結成し、
取り組むというもの」
あるチームでは高校生のための職業相談の場を開きたいというアイデアが出て、
残念ながら1年では実らなかったものの、
チームメンバー同士でその後も様々な活動を共にするようになり、
数年後には富士見町の商店街でユースセンターを開くことになった事例も。
いま駅前には「ユースセンターまるいち」
(NPO法人こどもの未来をかんがえる会、2024年開所)があります。

もう一つは、津田さん自身の変化です。

住み始めて5年ほどで立沢の出払いに出るようになり、誘われて
7年に一度の諏訪大社のお祭り「御柱祭」の作業員へ加入。

地元生まれでないと参加も無理だと思っていましたが、選ばれて柱に乗る役も経験しました。

「人生観を変えるぐらいの体験でした」

本番を見渡すと、森のオフィスを使う移住者も参加している。
「集落の人間になった」のが見える。
子どもが次の担い手になり、綱の結び方は口伝で受け継がれる。
景観もインフラも、自分たちで守る。

「集落の文化と景観とインフラを、自分たちがつないで守る。それこそが、本当の移住」

区の共同作業は、コワーキングに近い、とまで津田さんは言いました。

Q5. 50代、60代の場所でもありますか? 移住前に何を体験して欲しい?

若い場に見えがちですが、「その年代がすごく多い」と津田さん。
60代の会員も70代の常連もいます。

「ここに来ることで、自分ができることを再発見できればいい」

まだ来ていない人は、森のオフィスLivingに泊まり、となりのコワーキングで会話してほしい。
「見学しただけではない、もっと違う何かを感じ取れる」
家だけ見るお試しとは違う。
仕事の前に、つながりを試してみてほしい。

インタビューを終えて

台本どおりには進みませんでした。
印象に残ったのは、人と人とのつながりを大事にしている人だということです。
仕事はあとからついてくることもある。先にあるのは、ギブできるか、助け合えるか。
森のオフィス10周年を機に自主出版した書籍『十草十載』——同じ土に根を張った物語。森のオフィスは、建物というより、人が育つ土壌の名前なのかもしれません。
書籍購入:https://morinooffice.thebase.in

🚩森のオフィスを訪ねてみる

富士見 森のオフィス
〒399-0211 長野県諏訪郡富士見町富士見3785-3
TEL:0266-78-8009
https://www.morino-office.com/
定休:日曜・祝日(コワーキング)

🚩ウツリスムに相談してみる(無料)

富士見ウツリスムステーション
長野県諏訪郡富士見町富士見4654-796(富士見駅舎内)
ウツリスム 長野県富士見町にくらす
営業時間:平日9:00〜16:30(日・祝日休み)/土曜日(第一、第三のみ)9:00〜16:30
メール&電話でご予約可能です。

ARCHIVE