山のルールを学ぶ〜山菜を求めて

文:中村恭子(一般社団法人蓼科塾代表/地産地消料理研究家健康管理士/食育アドバイザー)

多くの料理人がそうであるように、地産地消料理研究家として私も食材にはこだわりたいと思っています。食材がどう作られているのかを出来る限り知りたいと思いますし、一方で人の手を介さず育った食材にもとても興味があります。
山菜もその1つ。

思いが高じ、自分で採った山菜を使って料理を作りたい!
と周囲に語っていたところ、ご縁があり山に詳しいガイドさんを紹介していただけることになりました。

今回ガイドを務めてくださることになったのは、なんと富士見町の町長 名取重治さん。
実は名取町長さんは、山菜・キノコ採りから渓流釣り、そして蜂追いが趣味という山のスペシャリスト。

名取町長さん

「このあたりの山菜採りに一番良い時期はGWあたりなのだけれど、今も(5月中旬)まだかろうじて残っているものもあるだろうから行ってみますか?」

もちろん二つ返事で、早速、山菜採りに出かけることになりました。
まず向かったのは、富士見町のとある山の中。車で行けるところまで行った後は、徒歩で登っていきます。

登山道と違い、獣道のような道なき道を草をかき分け登っていくと森の中にぽっかりと現れたのは、まるで「秘密の花園」と呼びたくなるような素敵な場所でした。

※この場所は町長さんの秘密の場所とのことで、詳しい情報はここではお伝えできません。

作り込まれた庭園にはない自然の織りなす美しさ、とでもいいましょうか。
そこはおとぎ話の世界のような、時が止まっているかのような空間でした。

清楚で可愛らしいニリンソウ
華やかなサクラソウ

しばしその場にうっとりと佇んでいましたが、そうそう、今回の目的は食材探しです。
花より団子!というわけで早速コゴミの採集にとりかかります。

コゴミ、コゴミ・・・

道中もあちらこちらに沢山見当たりましたが、町長さんがおっしゃった通り、時期が少し遅くなってしまっていたので日当たりのいい場所のものはもう随分と大きくなり、トレードマークのかわいらしい丸まった葉先が伸びてしまっているものばかりです。

町長さん

「大きくなっててもね、ポキっと折れるあたりまでは美味しく食べられますよ。」とのこと。
良かった!一安心です。

そして、よくよく探してみると

まだちゃんと残っていてくれました。くるんと丸まったお馴染みのコゴミです。
気を取り直して、コゴミ採りを再スタート。

良いコゴミを探すため、真剣に下をむきながらの採集作業、作業の合間には町長さんとコゴミの調理法談義に花が咲きます。

地元では茹でてマヨネーズをつけたり、鰹節と醤油をかけたり、天ぷらが一般的。
私はパスタの具材にしたり炒め物に使う、などなど。
アクがなく、味に癖がないので調理の幅が広いところが魅力の山菜です。

そうこうするうちに、カゴいっぱいのコゴミを採ることが出来ました。

さてお次は山ウドの採集です。
向かった先は、先程のおとぎ話のような空間から一変「荒野」を思わせる場所でした。

枯れ木となったウドの林と茨とが交差した中をかき分けて奥に進んでいくと、そこにはまだタラの芽があり、野いちごの木があり、そしてお目当ての若い山ウドもありました。

ウドの大木という言葉があるように、大きく育ったウドは食用にも木材にもならず使いみちがないことからあまりありがたくない例えに用いられていますが、若い山ウドは、穂先の部分や葉は天ぷらに、皮は金平に、皮を剥いた茎の部分は茹でて酢味噌和えも定番ですが、生食でも美味。

特に土の中の根に近い茎の部分が日が当たらず柔らかいため絶品で、捨てるところのない丸ごと食べることのできる山菜の1つです。まさに一物全体(命を丸ごと頂くという意味)、全てが美味しい食材です。

町長さん
「山ウドを採る時はね、まずちょっと土を掘って、太い柔らかい根の部分をナイフで切ります。醍醐味は切りたてのこの香りですよ。」

あぁこの香り!とれたての香りの良さはどう伝えたらいいでしょうか。

山菜の中で何が一番好きかと聞かれれば、私は迷うことなく山ウドと答えます。箱入り娘のように大切に育てられた白いウドも美味しいものですが、山ウドの鮮烈な香りに触れるとやはり野生種にはかなわないなと思うのは私だけでしょうか。

そう町長さんに伝えると嬉しそうににっこり。

「自分で採った山のものをつまみに酒を呑むこと、これが一番うまいんですよ。」

カゴいっぱいの山ウド、そしてタラの芽も少し採れました!

それならば!と今回のガイドのお礼は、この日採れたコゴミと山ウドを使ったお料理をお酒とともに楽しんでいただこうとイベントを開催することにしました。

場所は富士見町のコワーキングスペース、富士見森のオフィスのキッチンとカフェスペースをお借りすることが出来、お手伝いしてくださる方々もとんとんと決まり、

こうして山菜採りから約一ヶ月後。

町長さんへのお礼もかね、また自分で採った山菜で料理を作りたいという思いが形となった「野菜料理と地酒を楽しむ会」を開催する運びとなりました。

諏訪の酒蔵のお酒を6種類選りすぐり、先日のコゴミと山ウドをメニューに組み込み野菜のコースに仕立てます。
採ったコゴミはすぐに茹でて冷凍保存しておき、当日は湯葉とさっと炙った板海苔とあえて、ごま油と塩で味付け。

山ウドは保存が難しい茎や穂先の部分は採ったその日に美味しく頂き、葉と細い茎の部分を細かく刻みみりんと味噌で味付けをしたウド味噌を作って冷凍保存。これを、おにぎりの具材にして召し上がっていただきました。

町長さんだけでなく、八ヶ岳山麓での暮らしに興味のある東京からのお客様が多数参加してくださり、お食事会を楽しんでくださったようでとても嬉しかったです。

参加者同士の親睦が深まる、素敵な初夏の夕べとなりました。

これも名ガイドの名取町長さんのおかげです。
ここで、名取町長さんから教わった山のルールをお伝えしましょう。

 「根こそぎはもちろんのこと、あるだけ全部、といった採り方をしてはいけない。
一株から複数の芽がでている場合は、全部取るのではなくその内の1つ2つは必ず残すこと。」

山のルールは次へと命をつなぐこと。
そしてそれは私達が生きる上でも大切なことだと感じます。

私が八ヶ岳山麓に移住して7年。住めば都というように、

ここでは四季の移ろいだけでなく二十四節気、七十二候までも肌で感じる日々があり、今ではそれが何より豊かなことだと感じます。
ここ長野県富士見町は自然の中の命のサイクルに寄り添った日常を送ることが出来るのです。

富士見町に訪れたことのないという方、夏に近づく、これからの富士見町はとても涼しく過ごしやすい場所。
是非訪れてみては如何でしょうか?

文:中村恭子一般社団法人蓼科塾代表/地産地消料理研究家健康管理士/食育アドバイザー2011年東京都より長野県茅野市に移住。料理教室の開催、地産の伝統野菜を紹介するイベントの企画・運営やそれらを使った料理・菓子のメニュー開発等を行う。2015年、信州の魅力を県外に発信する一般社団法人蓼科塾を設立し代表理事に就任。地産地消に根ざした商品開発やイベントの企画・運営等を手がける。

 

富士見町では積極的に移住したい方のサポートをしております。 移住に興味のある方、一度訪れてみたい方は是非こちらからお問い合わせ下さい。

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